顔写真

(2007年4月7日)

 

 来週からいよいよ新学期が始まる。新学期と言えばクラス写真。写真ができあがるとまず真っ先に自分の顔の写り具合を見る。本物以上に写っていれば満足し、本物そのまま写っていればもう一つ物足りないと思い、自分のイメージ以下に写っていれば、あの写真屋はヘタクソだ、とボロクソに言うことになる (笑)。
 
 ところで、写真で一番苦労する仕事が新聞記者である。初期の新聞では写真がない文字ばかりだったが、現代では写真は必需品だ。事件を伝えるとき必ず加害者や被害者の写真が掲載され、紙面を盛り上げる。加害者の顔写真は警察が発表するから簡単に手にはいるが、被害者の顔写真は新聞社で集めるしかない。

 最近読んだ本(『新聞報道と顔写真』中公新書)によると、この顔写真集めがなかなか大変らしい。たとえば事件に巻き込まれて死亡した被害者宅を訪問し、お通夜をしている最中に「お写真、お借りできないですか」と切り出すのは、よほどの強心臓の人でも難しいそうだ。被害者宅が理解のある人なら話は簡単だが、なかなかそうはいかない。

 そこで、出身学校に行ってクラス写真を借りてきたり、祭壇にある黒リボンの付いた遺影をこっそりカメラに納めたり、時にはその遺影そのものを寸借してくることもある(!) らしい。さらに、他社が写真を入手できないようにするために、被害者の写真をごっそり全部拝借し、他社の妨害をすることもあるという。

 飛行機事故が起きたときはもっと大変である。何百人もの顔写真を短時間に集めなければならない。事故発生か?という第一報が入ると、各新聞社はただちに地方支部の新聞記者まで待機させる。もちろん、顔写真を入手するためである。犠牲者の氏名はもっとも報道価値のある重要なニュースであり、それを補完するために顔写真は欠かせない。しかし、突然の訃報に混乱している家族から写真を借りる困難さは想像にあまりある。

 ちなみに、政治家などの有名人の顔写真はたくさん準備されており、記事の内容によって選択される。例えば、汚職をして逮捕されたという場合は、手持ちの中で一番人相が悪そうなのを掲載すると いった具合である。

 また、顔写真によるイメージ作りも政治家の重要な戦略である。たとえば、プーチン元ロシア大統領の「笑顔」の写真は見たことがない。彼は本当はものすごくよく笑う明るい人物らしい。しかし、頼りになるプーチン、強いロシアのイメージ作りをするために、マスコミに笑った写真を撮らせないのだという。

 たかが顔写真、されど顔写真。新聞、雑誌の紙面を飾る顔写真には、こうした裏話がある。
 

 

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